出来高検収書のインボイス対応について

消費税法

令和4年8月31日、国税庁は、インボイス制度に関して質問の多い事項について、「お問い合わせの多いご質問」を掲載しています。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0521-1334-faq.pdf

国税庁が追加問として、整理、集約したものが問1から問3になります。問3は、下請業者に建設工事の一部を請け負わせた場合、下請業者が行った工事にかかる出来高検収書について、インボイス制度の下で、出来高検収書により仕入税額控除を行う場合、どのような対応になるかについて書かれています。

今回は、出来高検収書についてのインボイス対応について確認したいと思います。

今までの取り扱い

仕入税額控除を受けるためには、一定の事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が要件とされます(消法30)。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6497.htm

なお、「仕入明細書等」としての出来高検収書に記載する事項は以下のとおりです(消法30⑨二)。

イ 書類の作成者の氏名又は名称

ロ 課税仕入れの相手方の氏名又は名称

ハ 課税仕入れを行った年月日

ニ 課税仕入れに係る資産又は役務の内容

ホ 税率の異なるごとに区分して合計した課税仕入れに係る税込対価の額

建設工事を請け負った元請業者が、下請業者に建設工事の一部を請け負わせる場合においては、出来高検収書を作成し、それに基づいて請負金額を支払っているときは、出来高検収書は、「仕入明細書等」として取り扱われます。

なお、元請業者は、上記イからホの記載事項を、下請業者に確認を受けることによって、仕入税額控除の適用が認められます(消基通11-6-6)。

下請業者への確認方法については、メール等で通知を受ける方法などが挙げられます(インボイス制度に関する取扱通達4-6)。

インボイス制度導入後の取り扱い

8月31日国税庁が発表した、質問の答えとして、インボイス制度のもとでも、元請業者が作成した出来高検収書を、下請業者に記載事項の確認を受けたうえで保存することにより、仕入税額控除の適用を受けることについては現行と変わりませんとしています。

また、出来高検収書には、インボイス制度における「仕入明細書等」の記載事項が記載されている必要があります(インボイス制度に関するQ&Aの問71)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf#page=99

イ 書類の作成者の氏名又は名称

ロ 課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び登録番号

ハ 課税仕入れを行った年月日

ニ 課税仕入れに係る資産又は役務の内容

ホ 税率ごとに合計した課税仕入れに係る支払対価の額及び適用税率

へ 税率ごとに区分した消費税額等

※上記アンダーラインがインボイス制度導入後に追加が必要になる記載事項です。

元請業者が出来高検収書を下請業者に交付し、それに基づいて下請業者が請求書を作成・交付する場合において、その請求書を仕入税額控除の適用を受けるために保存する場合には、その請求書がインボイスの記載事項を満たす必要があります(インボイス制度に関するQ&Aの問25)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf#page=40

注意点

ただし、下請業者が適格請求書発行事業者でなくなったことにより、下請業者の行う建設工事が、適格請求書の交付ができないものであることが判明した場合には、その交付ができないことが明らかとなる建設工事完了日の課税期間の課税仕入れの支払い対価の額から、これまでその工事で出来高検収書により仕入税額控除の対象とした金額を控除することとなります。

過去、その工事について、仕入税額控除の適用を受けていた部分を減額調整する必要があるとのことです。

さいごに

会社に経理担当者のいない法人について、社長が、下請業者について、適格請求書発行事業者に該当しなくなったことを、正確に把握できるのでしょうか。事業者の負担がとても大きいと思います。

インボイス制度の施行まで約1年になりましたが、事業者に過度の負担がかからないような制度になることを祈っております。

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