データテンプレートをつかう
弊所では、会計ソフトは、弥生会計(お客様のご希望に応じてマネーフォワードクラウド)をつかうようにしています。今回は、弥生会計での設定を前提に、建設業の記帳について確認したいと思います。
弥生会計では、業種に応じたデータテンプレートを用意していますので、そちらを使います。なお、データテンプレートは、業種ごとに、あらかじめ業種にあった勘定科目が設定されていて、データテンプレートをつかって導入設定をすれば、導入の段階で、建設業にあわせて勘定科目を設定しなおす手間が少なくなります。
建設業の場合、建設業特有の勘定科目が、数多くでてきます(完成工事高、完成工事未収入金、未成工事支出金など)。設定の手間は少しでも少ない方がいいですね。
設定方法は次のとおりです。
未成工事支出金の勘定科目を少し工夫してみる
経費ごとに勘定科目を追加する
私の場合、未成工事支出金の勘定科目について、次のように追加設定します。
- 未成工事支出金(材料費)
- 未成工事支出金(外注費)
- 未成工事支出金(経費その他)
未成工事支出金の項目を分けることで、ある程度予算書との突合せがしやすくなるのではないかと思います。
作成した勘定科目に、支払先ごとに補助科目を設定する
先に作成した、未成工事支出金に、支払先ごとに補助科目を追加します。
取引毎の仕訳を考える
未成工事支出金を支出したとき
請求書の内容から、未成工事支出金を現場ごとに分けます。
勘定科目 | 借方金額 | 勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
未成工事支出金(材料費) | 1,000,000 | 現金及び預金 | 3,000,000 | 支払先・内容・現場名(001) |
未成工事支出金(材料費) | 1,000,000 | 支払先・内容・現場名(002) | ||
未成工事支出金(材料費) | 1,000,000 | 支払先・内容・現場名(003) |
未成工事受入金の入金があったとき
勘定科目 | 借方金額 | 勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
現金及び預金 | 5,000,000 | 未成工事受入金 | 5,000,000 | 施主名・現場名(001) |
工事が完成・引渡ししたとき
完成・引渡しが完了した工事について、仕訳を切ります。未成工事支出金については、完成・引渡しが完了した現場名を、摘要から検索・抽出して、完成工事原価に振替えます。
なお、完成工事原価について、材料費、外注費、水道光熱費等の勘定科目に、現場名ごとに補助科目を設定しておきます(マーカー部分)。
勘定科目 | 借方金額 | 勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
未成工事受入金 | 5,000,000 | 完成工事高 | 10,000,000 | 施主名・現場名(001) |
完成工事未収入金 | 5,000,000 | 施主名・現場名(001) | ||
材料費-現場名(001) | 1,000,000 | 未成工事支出金 | 8,000,000 | 支払先・内容・現場名(001) |
外注費-現場名(001) | 5,000,000 | 支払先・内容・現場名(001) | ||
経費-現場名(001) | 2,000,000 | 支払先・内容・現場名(001) |
収益の認識基準に注意する
長期大規模工事とそれ以外の工事
工事の請負に係る収益の額及び費用の額は、その工事を長期大規模工事とそれ以外の工事に区分して、一定の基準により認識することになります。
長期大規模工事とは、次の3つの要件の全てを満たす工事です。なお、長期大規模工事である場合には、工事進行基準が強制適用されます(法法64、法令129)。
- 着手の日から目的物の引き渡しの期日までの期間が1年以上
- 請負の対価の額が10億円以上
- 請負の対価の2分の1以上が、その工事の目的物の引渡しの期日から1年を経過する日後に支払われることが定められていないもの
長期大規模工事以外の工事で、工事期間が2事業年度以上にわたるものについては、工事進行基準と工事完成基準のどちらかを選択適用することができます。
それ以外の工事の工事については、工事完成基準が適用されます。
工事進行基準と工事完成基準
工事進行基準
算式で示すと次のようになります。
工事中の事業年度
当期の収益の額=(工事の請負の収益の額×工事進行割合※)-前事業年度までの収益の額の合計額
当期の費用の額=(工事原価の額×工事進行割合※)-前事業年度までの工事原価合計
引渡事業年度
当期の収益の額=工事の請負の収益の額-前事業年度までの収益の額の合計額
当期の費用の額=工事原価の額-前事業年度までの工事原価合計
※工事進行割合=(既に要した原材料費、労務費、経費の合計額)÷工事原価の額
工事完成基準
工事中の事業年度
当期の収益の額 零
当期の費用の額 零
引渡事業年度
当期の収益の額=工事の請負の収益の額
当期の費用の額=工事原価の額
配賦計算をどうするか
適正な完成工事原価を計算する上では、間接費(通信費や車両費など、完成工事高に対して、間接的に発生した原価)の配賦計算までできることが理想だと思います。。
方法としては、完成工事高など一定の基準をもとに、間接費を完成工事原価のうち、現場ごとに配分して計上します。
ただし、これは手間や、完成工事原価の内訳等が変われば、その都度配賦計算をやり直す必要がでてくるかもしれません。そのことから、会計ソフトで配賦計算後の原価を仕訳で入力するよりも、工事の予実算比較を行う場合に、Excel等で個別に計算するほうがよろしいかと個人的には思います。
さいごに
建設業の会計処理は、勘定科目が独特なので、ある程度の慣れが必要かと思います。手間などを考えると記帳代行から、専門家に依頼することも、方法のひとつかもしれません。