暗号資産の税務について

暗号資産

今回は、暗号資産の税務について整理してみたいと思います。

取り扱いについて参考にした資料

今回、ブログを書くにあたって、国税庁の「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)を参考にしました。

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_03.pdf

法人税・所得税共通

暗号資産で商品を購入した場合

保有する暗号資産で商品を購入した場合には、保有する暗号資産を譲渡して、商品を購入したことになります。そのため、その暗号資産を譲渡したときの対価と原価との差額が利益(所得金額)になります。以下は例です。

3月10日 300,000円で1ETHを購入

4月5日  432,000円で、商品購入するときに、1ETHで支払

432,000円-300,000円=132,000円が利益になります。

暗号資産の交換を行った場合

暗号資産の交換を行った場合も、上の暗号資産で商品を購入した場合と同じです。保有する暗号資産を譲渡して、別の暗号資産を購入したことになります。そのため、保有する暗号資産を譲渡したときの対価と原価との差額が利益(所得金額)になります。

暗号資産を分岐により取得した場合

暗号資産を分岐により取得した場合には、所得は生じません。 分岐により取得した暗号資産を売却又は使用した時点において所得が生じることになります。

暗号資産をマイニング等により取得した場合

令和3年12月発表の取り扱いについて、マイニング等として、マイニングに、レンディングとステーキングが追加されています。取得時の利益が法人税と所得税の課税対象になります。

法人税

譲渡損益の計上時期

暗号資産の売却等に係る契約をした日(約定日)の属する事業年度に計上します。 ≪法人税関係≫20

評価方法

原則(法定評価方法)は、移動平均法になります。総平均法を採用する場合には届け出が必要です。暗号資産の種類ごとに届け出が必要です。

期末時価評価

法人が、期末に暗号資産を保有する場合には、活発な市場が存在する暗号資産については、時価評価する必要があります。

また、その暗号資産を自己の計算において保有する場合には、その評価額と帳簿価額との差額をその事業年度の益金の額又は損金の額に算入する必要があります

期末みなし決済損益

法人が、暗号資産の信用取引を行った場合で、期末に未決済のものがあるときは、期末に決済したものとみなして計算した利益相当額(又は損失相当額)を、その事業年度の益金の額(又は損金の額)に算入します。

所得税

収入時期

原則、引き渡し日の属する年分になります。(選択で、契約日の属する年分とすることもできます。)

所得区分

暗号資産取引により生じた利益は、所得税の課税対象になります。原則、雑所得に区分されます。

ただし、その暗号資産取引が事業と認められる場合等には、この限りではありません。

必要経費

必要経費となるものには、次のものが例示されています。

  • 暗号資産の譲渡原価
  • 売却の際に支払った手数料
  • その他、インターネット、スマートフォンの回線利用料、パソコン等の購入費用

上記のうち、暗号資産売却のために必要な支出であると認められる部分の金額に限り、必要経費とすることができます。

評価方法

初めて暗号資産を取得した年分の確定申告期限(原則、翌年3月15日)までに、総平均法か移動平均法かのどちらかで届け出が必要です。なお、届け出がない場合には総平均法になります。

取得価額や売却価額がわからないとき

国内の暗号資産交換業者を通じて取引した場合とそれ以外の場合とで取り扱いが異なります。

国内の暗号資産交換業者を通じて取引した場合

 年間取引報告書から確認できます。(平成30年1月1日以降の暗号資産取引については、国税庁から暗号資産取引業者に対して、「年間取引報告書」の交付を依頼しているそうです。)

上記以外の暗号資産取引(国外の交換業者、個人間取引)の場合

銀行口座の入金状況、出金状況から、売却価額や取得価額を確認します。

また、売却した暗号資産の取得価額について売却価額の5%として計算することが認められています

損失が生じたとき

雑所得の金額の計算上、生じた損失については、給与所得等の他の所得から差し引くことはできません。

相続税

相続や贈与で取得した場合

被相続人等から暗号資産を相続もしくは贈与又は遺贈により取得した場合には、相続税又は贈与税が課税されます。

評価方法

活発な市場が存在する暗号資産は、評価通達に定めがありません。そのため評価通達5の定めに基づき評価通達に準じて評価します。

この場合、活発な市場が存在する暗号資産については、活発な取引が行われることによって一定の相場が成立し、客観的な交換価値が明らかになっていることから、外国通貨に準じて、暗号資産交換業者が公表する課税時期における取引価格で評価します

その他

譲渡したときの消費税の取り扱い

消費税法上、支払手段及びこれに類するものの譲渡は非課税とされています。国内の暗号資産交換業者を通じた暗号資産の譲渡は、この支払手段等の譲渡に該当するので、消費税は課されません。

暗号資産で給与を支払った場合の源泉所得税の取り扱い

給与は、金銭で支給されるのが一般的ですが、労働協約等で別段の定めがあり、給与の一部を暗号資産で支給する場合、その暗号資産による支給分も給与所得の収入金額に該当します。

そのため、給与を支払う者(源泉徴収義務者)は、給与の支払いの際、暗号資産の支給分も合わせて源泉徴収税額の計算をすることになります。

暗号資産について気を付けたいこと

法人が、期末に暗号資産を保有していた際に、期末時価評価の処理もれと、評価損益の計上もれに注意する必要があると思われます。取得時から期末までの間に時価が著しく上昇していた場合には、利益が増えますので、法人税等に影響がでてしまいます。

法人で暗号資産を扱っている場合には、納税資金を確保する目的で、期末までに一旦全部売却するのも一つの方法かもしれません。

さいごに

NFTの取り扱いについては、令和4年4月1日に国税庁から「NFTやFTを用いた取引を行った場合の課税関係」が公表されています。NFTの取り扱いについては、別の機会に書きたいと思います。

この記事は、投稿日現在の法令等に基づいて書いております。また、一般的な税務上の取り扱いを示したものであり、個別の事案についての税務判断を保証するものではありません。

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