海外勤務になったら準備すること

所得税法

今回は、海外勤務になったら、納税やらどういう準備が必要かについて書きたいと思います。

まず、所得税法上の取り扱いを見てみることにします。

非居住者とは

所得税法において、居住者とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続き1年以上居所を有する個人をいいます。(所法2①三)

日本で生活している分には、居住者にあたるわけですね。

なお、ここでいう「住所」とは、各人の生活の本拠をいい、生活の本拠かどうかは、客観的な事実で判断されます(法基通2-1)。また、その客観的な事実の判定は、滞在日数、住居、職業などを総合的に考慮して判断されます。

客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かは、滞在日数、住居、職業、生計を一にする配偶者その他の親族の居所、資産の所在等を総合的に考慮して判断するのが相当である。

東京地方裁判所平成28年(行ウ)第434号、435号、436号

また、非居住者とは、居住者以外の個人をいいます(所法2①五)。

よって、滞在日数、住居、職業当から国内に住所を有しなくなった場合には、非居住者となります。

非居住者の税務上の取り扱い

非居住者は国内源泉所得に限り、所得税が課税されます(所法5②一)。

また、国内源泉所得には、次のようなものがあります(所法161)。

(1) 恒久的施設に帰属する所得、国内にある資産の運用または保有により生ずる所得、国内にある資産の譲渡により生ずる所得

(2) 組合契約等に基づいて恒久的施設を通じて行う事業から生ずる利益で、その組合契約に基づいて配分を受けるもののうち一定のもの

(3) 国内にある土地、土地の上に存する権利、建物および建物の附属設備または構築物の譲渡による対価

(4) 国内で行う人的役務の提供を事業とする者の、その人的役務の提供に係る対価

例えば、映画俳優、音楽家等の芸能人、職業運動家、弁護士、公認会計士等の自由職業者または科学技術、経営管理等の専門的知識や技能を持つ人の役務を提供したことによる対価がこれに当たります。

(5) 国内にある不動産や不動産の上に存する権利等の貸付けにより受け取る対価

(6) 日本の国債、地方債、内国法人の発行した社債の利子、外国法人が発行する債券の利子のうち恒久的施設を通じて行う事業に係るもの、国内の営業所に預けられた預貯金の利子等

(7) 内国法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配等

(8) 国内で業務を行う者に貸し付けた貸付金の利子で国内業務に係るもの

(9) 国内で業務を行う者から受ける工業所有権等の使用料、またはその譲渡の対価、著作権の使用料またはその譲渡の対価、機械装置等の使用料で国内業務に係るもの

(10) 給与、賞与、人的役務の提供に対する報酬のうち国内において行う勤務、人的役務の提供に基因するもの、公的年金、退職手当等のうち居住者期間に行った勤務等に基因するもの

また、国内源泉所得の金額が基礎控除額を超える場合には確定申告が必要になります。

年の途中で海外勤務になったら

非居住者が確定申告をしたり、税務署から書類を受け取ったりと、納税義務を果たすために、納税管理人を選任する必要があります(通法117)。

なお、非居住者が、納税管理人を定めたときには、その非居住者の納税地を所轄する税務署長に「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出する必要があります(通法117②)。この届出書を提出した以後、税務署が発送する書類は、納税管理人あてに送付されますが、確定申告書は非居住者の納税地を所轄する税務署長に対して提出します。

なお、納税管理人は法人でも個人でも構いません。

納税管理人を指定して出国した場合には、納税管理人を通じて確定申告書を提出したり、納税することになります。なお、申告期限は、居住者と同様、2月16日から3月15日までに確定申告書を提出し、納税することになります。

もし、納税管理人を指定しないで出国した場合には、居住期間に生じたすべての所得について、確定申告書をしなければなりません。

さいごに

非居住者に対して、日本国内で源泉徴収の対象となる国内源泉所得の支払をする者は、その支払の際、原則として、所得税および復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません(所法212)。また、源泉徴収した税額を翌月10日までに納付しなければなりません。

海外勤務になったら、現地での業務や生活のことで頭がいっぱいで、日本での納税まで気が回らなくなるかもしれません。しかし、日本での申告及び納付手続きを怠ると、加算税や延滞税などのペナルティを受けることになります。十分にご注意ください。

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