ふるさと納税の返礼品の課税関係
ふるさと納税をされている方は多いかと思います。年末近くになると、お客様から、「今年はいくらまで、寄付して大丈夫?」というご質問も頂きます。ただ、ふるさと納税の返礼品に所得税がかかるかどうか意識されている方は、あまり多くないのではないでしょうか。
今回は、ふるさと納税の返礼品の課税関係などについて確認したいと思います。
ふるさと納税の返礼品をもらったときの課税関係は、国税庁の質疑応答事例より確認できます。
所得税法上、ふるさと納税の返礼品を受け取ったことによる経済的利益は、収入すべき金額に含まれるものとします(所法36①)。また、その経済的な利益は、法人(地方公共団体)からの贈与により取得するものとして、一時所得に該当します。
なお、一時所得の金額は次の算式で計算します。
A - B - 50万円(特別控除額)
A:その年中の一時所得に係る総収入金額
B:その収入を得るために支出した金額の合計額(その収入を生じた行為をするため等の直接要した費用の額に限られます。)
なお、特別控除額は、A – B が50万円に満たない場合には、その残額となります。また、課税の対象となる金額(課税所得金額)は、上記の算式の残りに2分の1をかけた金額になります。
申告は必要?
ふるさと納税の返礼品は、確定申告で申告する必要があります。ただし、ふるさと納税にかかる寄付金控除の確定申告に比べて、返礼品について所得税がかかるケースは、そう多くないと思われます。
Bが0円とした場合、Aが50万円以下であれば、一時所得は生じません。
では、ふるさと納税の返礼品にかかる経済的な利益の金額をどう計算すればよいのでしょうか。
平成31年度税制改正により、ふるさと納税の対象となる寄付金は、総務大臣が定める基準に適合する都道府県等として総務大臣が指定するものに対する寄付金とされました。基準は、①返礼品は、寄付金の額に対する返礼品の金額の割合が100分の30以下であること。②返礼品は地場産品とすることとされました(地方税法37の2②)
つまり、返礼品にかかる経済的な利益の金額は、ふるさと納税の金額の概ね30%と考えておけば、よろしいかと思います。
例えば、ふるさと納税の返礼品にかかる経済的な利益の金額を、48万円(特別控除額以下)とした場合、それにかかるふるさと納税の金額は、30%で割りかえすと、160万円になります。
寄付金控除の上限額160万までつかうためには、いくらまで所得があればよいのでしょうか。参考までに、一時所得以外の所得が、給与所得のみの場合には、給与収入が4,400万円(配偶者なしと仮定)までは、寄付金控除の上限額160万円まで大丈夫という計算になりました。
参考までに、令和2年分の国税庁の民間給与実態調査によると、1年を通じて勤務した給与所得者5245万人について、給与階級別分布をみると、給与所得が2,500万円を超える者が、全体の約0.3%となっておりました。
この分布からみても、返礼品にかかる経済的な利益の金額について所得税がかかる方は、そう多くないのではと思われます。
ただし、その年に他の一時所得(生命保険の一時金、損害保険の満期返戻金等)がある場合には、特別控除額を超える可能性があるので、要注意です。
返礼品の収入時期
返礼品を受領した日が、所得の発生日と取り扱われているので、返礼品を受け取った時期については、十分注意が必要です(週刊税務通信No.3716、14頁)。令和4年分の寄付金でも、実際に返礼品が届くのが、数か月先になったりすることは、普通にあることだと思います。
さいごに
ふるさと納税にかかる返礼品の受取方法について、ポイント制を採用している自治体もあります。返礼品の受け取る時期や、他に一時所得がないか注意し、必要に応じて確定申告する必要がありますので、充分にご注意ください。