医療機関のインボイス対応

インボイス

今回は、医療機関のインボイス対応について確認したいと思います。

まず医療機関の売上取引について、消費税の課税関係を検討します。

医療機関の売上取引

医療機関の売上取引について、大まかに以下のような取引があると思われます。取引ごとに消費税の課税関係を確認します。

社会保険診療収入

「社会保険診療収入」とは、健康保険法や国民健康保険法などに定める給付や医療、介護、助産もしくはサービスを提供することによって、社会保険診療報酬支払基金から支払を受ける社会保険診療報酬や、その他の報酬支払機関から支払われる国民健康保険診療報酬等をいいます。

なお、これらについては、消費税法上、健康保険法に基づく療養、医療としての資産の譲渡等は、非課税になります(消法6、消法別表1六)。

事業者に対する課税売上

医療機関における事業者に対する消費税の課税売上としては、以下のようなケースが考えられます。

・医療機関が企業から社員の健康診断や予防接種を受託しているケース

・医療機関として企業から産業医としての報酬(給与として個人が受け取るものを除く)を受け取っているケース

・企業からの顧問収入、受託収入、治験収入、テナント収入があるケース

・病院の売店において、企業等の従業員が社用の買い物として、飲料、文房具等を購入するケース

日医「適格請求書保存方式(インボイス制度)の導入と医療機関の対応」12頁

但し、売上先が免税事業者、簡易課税制度を選択している課税事業者については、インボイスを必要としません。

その他の課税売上

自費診療については、一般的に売上先が消費者になります。この場合、消費者はインボイスの発行を必要としないと思われます。

適格請求書発行事業者として登録するかどうかの判断は?

適格請求書発行事業者の登録をするかしないかについては、以下の2点から検討します。

  • 売上先がインボイスを必要とするか
  • 適格請求書発行事業者の登録を受けた場合(もしくは受けなかった場合)

インボイスを必要とする売上先は、仕入等に係る消費税額の控除を受けるために、事業者が交付するインボイスが必要になります。

医療機関における選択肢

インボイス発行事業者の登録を受けるかどうかは、あくまで事業者の任意です。

医療機関における選択肢は、次の①から③が挙げられます。

①登録申請を行い、登録を受け、インボイスを発行する

②インボイスを発行せず消費税相当額または一定額を値引きする(値引きは取引喪失のリスクを抑えるためのものであり、消費税法上求められるものではない)

③インボイスを発行せず値引きもしない(取引喪失のリスクが高い)

上記①~③の選択を判断するにあたって検討すべき事項は、以下の通りです。

・インボイス発行に対する取引先の意向、ニーズ

・インボイスを発行するための手間とコスト(手書きで対応するか、システム対応するかの検討含む)

・インボイスを発行せずに消費税相当額の値引きをした場合の負担

・インボイスを発行せずに取引を失った場合の損失

・免税事業者においては課税選択した場合の消費税納税負担

日医「適格請求書保存方式(インボイス制度)の導入と医療機関の対応」10頁から11頁

適格請求書発行事業者の登録を受ける場合、基準期間の課税売上高が1,000万円以下になっても、課税事業者として、消費税の申告・納付が必要になります。

一方で、適格請求書発行事業者の登録を受けない場合、売上先から課税事業者になるように要請されたり、取引金額の引き下げを要請される可能性があります。

医師個人における検討事項

次の場合には、医師個人についても適格請求書発行事業者として登録を受けるかどうか、検討が必要になると思われます。

  • 医師個人に係る講演料や原稿料があるケース
  • 医師個人が副業(不動産賃貸)を行っているケース

おわりに

医療機関のインボイス対応については、その医療機関のみならず、医師個人についても適格請求書発行事業者として登録を受けるかどうか検討が必要になる点については、特に注意が必要です。

消費税の課税事業者である医療機関につきましては、基本的に、適格請求書発行事業者として登録されることをお勧めしています。

なお、免税事業者がインボイス制度にどう対応するかについては、以下のブログもご参考頂ければ幸いです。

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